aimastering.dev / dev log
Post #019 · 2026-03-08

凪——そして5社LLMストリームを作った、TRIVIUMの原型

激流の仕事と比較して見えた「無風市場」と、頓珍漢AIを複数で黙らせる方法。

market analysisnagiLLM streamTRIVIUM originmulti-model
1.

激流と凪——同じ目で見て初めてわかること

仕事でマーケット分析をする。BtoB SaaS、フィンテック、ヘルスケア——3ヶ月で地形が変わる。 新規参入が来て、既存プレイヤーが再編して、去年の正解が今年の敗因になる。 それが当たり前の世界にいると、「動かない市場」を見る目が養われる。

20年分のサイケデリック・トランスのデータを眺めていたとき、その目が反応した。

仕事のマーケット
激流
  • ·四半期ごとに新規参入
  • ·アーティスト(プレイヤー)の顔ぶれが変わる
  • ·テクノロジーが消費パターンを破壊する
  • ·去年のトップが今年は3位
トランス市場(20年分)
  • ·上位アーティスト:ほぼ変化なし
  • ·コード進行:Am–G–F–E で固定
  • ·BPM:138±5 で収束
  • ·新たな破壊者:不在

これはニッチではない。これは誰も戦場を認識していない空白地帯だ。

2.

「な、なんだこれは」の正体

最初は恐怖として来た。「動いていない市場に入っても意味がないのではないか」という読み方だ。 しかし5秒後に逆転した。

恐怖の読み方

動きがない → 需要がない → 参入しても無意味

5秒後の読み方

上位不変 → 挑戦者が来ていない → 戦場を誰も認識していない → 最初に認識した者の空間

才能がないという問いは、比較対象を前提にした問いだ。 比較対象が存在しない座標に立てば、その問いは無効になる。 凪は恐怖ではなく、空席の通知だった。

3.

自分の考えを全部破棄した

ここで一度止まった。

「凪を見つけた、ここに入る」という判断は自分の考えだ。そしてこれまで自分の考えは何度も外れてきた。 180曲作ったが売れなかった。2つのプロトタイプを作ったが完成しなかった。

だから一度全部捨てることにした。自分の思考を前提にしない。 「私が正しいと思うこと」ではなく、「複数の独立した知性が収束する点」を探す。

自分の考え=ダメ、という前提はこのとき再確認した。 感情ではなく方法論として。
4.

5社ストリームの構築

OpenAI・Anthropic・Perplexity・Vertex(Gemini)・Gemini Flash。 同じ質問を全員に同時に投げ、それぞれの回答を並べて収束点を見る——というストリームを作った。

これは「良いAIを選ぶ」話ではない。どの単体モデルも、文脈が深くなると頓珍漢なことを言い始める。 問題は個々のモデルの品質ではなく、単一の観点から答えを取ることそのものだ。

5社ストリームのアーキテクチャ
同じ質問 Q → [
OpenAI GPT-4o
論理的整合性・構造的答弁
Anthropic Claude
文脈の深追い・反論の生成
Perplexity
リアルタイム検索との照合
Google Vertex
大規模データとの整合確認
Gemini Flash
高速スキャン・異常値の検出
] → 収束点を抽出 → 答え
5.

単独は頓珍漢、複数は収束する

動かしてみると、明らかなことがあった。

観察 1:
単体で聞くと自信満々に間違える

モデルは「不確かさを表明するコスト」を払わない。確信度と正確性は別物。

観察 2:
5社に同じ質問を投げると、3社以上が一致する点が出てくる

一致点は「各モデルのトレーニングデータに共通して存在する事実」を示す。これが信頼できる。

観察 3:
1社だけが違う答えを出す場合、その1社が正しいことがある

アウトライアーを棄却するのではなく、なぜ違うかを問う——これが拒否権の起源だ。

「アウトライアーを棄却しない」という点が重要だ。 これは後にTRIVIUMの拒否権設計——U(p) → 0 のveto構造——に直結する。

6.

これがTRIVIUMの原型だ

AI Consensus Stream — 実際のUI
GitHub →
AI Consensus Stream UI — Tech Expert、Biz Strategist、Synthesizerの3エージェントが「サイケトランスに似合う和歌ベスト3」に対して独立分析し統合決定を出している

クエリ:「サイケトランス似合いそうな和歌ベスト3」 — Tech Expert(音響工学・神経科学)、Biz Strategist(市場分析)、Synthesizer(統合決定)が独立評価し収束点を出力する。TRIVIUMの3エージェント構造の直接的な原型。

5社ストリームは最初、雑なシステムだった。プロンプトを手でコピーして5つのタブに貼り、 結果をスプレッドシートに並べて目視で収束点を探す——完全に手作業だ。 しかしこのUIに進化した段階で、構造が可視化された。

しかしその手作業の中で、構造が見えた。

5社ストリーム → TRIVIUM への変換
5社全員に投げる
3エージェントが独立して評価する
収束点を目視で探す
フィールド別重み付き統合で自動収束
アウトライアーを棄却しない
拒否権(veto)として設計に組み込む
「なぜ違うか」を問う
合議プロセスの透明化・ログ出力

TRIVIUMは「3つのLLMを使う設計」ではない。 「複数の独立した評価主体が収束するプロセスそのものを、システムとして実装した」ものだ。 その思想は、スプレッドシートと5つのタブから始まった。